SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(119L)
RE:488
ナレーション
「強大な力を持つ謎の肉食恐竜。その凄まじい力の前に絶対絶命のロボット・チームを救ったのは、SFXボイジャーの万能陸上装甲車、ランド・チャレンジャーだった…」

広いメインストリートの中央。
ランド・チャレンジャーの巨体が、ゆっくりと恐竜に向って前進する。

ランド・チャレンジャーの強力な砲撃を食らって倒れた恐竜は、ワンディム達の超硬ワイヤーに邪魔されて、うまく起き上がることが出来ずもがく。

ランド・チャレンジャー操縦席。
操縦席のショウイチとゲンザブロウ。

ショウイチがゆっくりとアクセルを踏み込み、機体を徐々に前進させて行く。

ゲンザブロウ
「油断するな。彼奴はまだ戦闘能力が低下しておらんぞ…」

ショウイチ
「ええ。…しかし、どう思います?」

ゲンザブロウ
「(ショウイチを見て)…ん?」

ショウイチ
「(前を向いたまま)…あの恐竜の事ですよ。彼奴、本物の恐竜なんでしょうか?」

再び前方の恐竜を見るゲンザブロウ。

ゲンザブロウ
「…まさか。あのロボット達の武器は充分威力のあるものじゃ。それをまともに受けて無傷の生物がいるとは、ワシには思えんがな…」

ショウイチ
「それじゃあ、お父さんは、やはり…」

ゲンザブロウ
「(うなずく)…外見は非常に巧妙に作られているが…恐らくロボットじゃな、奴は。」

恐竜を見つめるショウイチ。

ショウイチ
「ロボット…あの恐竜が…信じられない…」

一方、ゲンザブロウはコミュニケーターのスイッチを入れ、上空で待機中のアース・ムーバーを呼び出す。

ゲンザブロウ
「ユキコさん、ユキコさん!」

モニターにアース・ムーバーのユキコが映る。

ユキコ
「ハイ!ユキコです。」

ゲンザブロウ
「高電圧ネットの準備をしておくれ。こちらからの合図を待って恐竜に投下するんじゃ。」

ユキコ
「分かりました。」

ゲンザブロウ
「さて、恐竜め、正体を現すかの…」

B.O.C.エアロデッキ。
機体後部上面にあるオープンの展望デッキ。
その上にラピッド・スターが降下して来る。デッキすれすれでホバリングする。

コクピットのキャノピーガラスが開き、マニピュレート・アームが、ゆっくりと
コクピットの高さまで持ち上げられる。

前部操縦席に座っていたエリカ、隣りのケンタの手を借りてコクピットから降り、
マニピュレート・アームの上に立つ。

ケンタを見上げるエリカ。

エリカ
「…(ケンタを見て)…ありがとう、ケンタ君。」

ケンタ
「(微笑みながら)…うん。」

と、エリカの背後、エアロデッキに続いたサンルーム。
ジャンクのコウモリロボットの攻撃で粉々になったガラスをかき分けながら、マ
ネージャーのエリック・ビトーがかけ寄って来る。

眼の前のラピッド・スターに眼を丸くするビトー。

ビトー
「…こ、これは一体!?…凄い飛行機だ…(マニピュレート・アーム上のエ
    リカを見る)…アッ、エリカ!エリカ!無事だったのか!!」

一瞬、その声にビトーを見るエリカ。
しかし、すぐにケンタ達の方を向く。

ケンタ、デッキのビトーの方を一瞬見る。

ビトーの他にも、騒ぎを聞き付けて人々が集まり始めている。

ケンタ
「…(エリカを見て)…もう行かなくちゃ……(未練を断ち切る様に)…
    さよなら…」

ゆっくりとマニピュレート・アームをデッキに降ろし始めるケンタ。

エリカ
「行くって…ケンタ君、あなた達まさかあの恐竜と!」

そのエリカの問いかけにうなずくケンタ。

エリカ
「…どうして…なぜあなた達が…」

ケンタ
「…あの恐竜は多分ロボットだ。オレ達は誰がアイツを作ったか知ってる。あの恐竜を作った奴の悪企みを止められるのは、今はまだ、オレ達だけなんだ。だから…」

その言葉を最後まで言い終わらない内に、黙るケンタ。
何事か考える…

と、それまでケンタとエリカのやり取りを聞いていた後部操縦席のリエ、エリカを見て。

リエ
「(エリカを見て)…エリカさん、ケンタの言う通りよ。私達はそいつの悪企みを阻止しなくちゃならないの。…私達なら、それが出来るかも知れないから…」

エリカ
「でも…」

ケンタを見るエリカ。
しかし、ケンタはエリカの視線を外し、何事か考えている。

エリカはケンタに向って何か言おうとするが、そのケンタの表情に、言い出せずに思い止まる。

寂しげな表情で、デッキに降ろされたマニピュレート・アームから降りる。

リエ
「エリカさん、危ないから少し離れててね。…(ケンタを見る)…いいわねケンタ?発進するわよ。」

エリカの方を向かず、無言でうなずくケンタ。
キャノピーガラスがゆっくりと閉まる。

ラピッド・スターのエンジンが徐々に出力を上げ、ゆっくりと垂直上昇を始める。
そのラピッド・スターに、まるで後ろ髪を引かれる様に、1歩、2歩と前に歩み
出すエリカ。

エリカ
「ケンタ君…」

上昇して行くラピッド・スター、そのコクピットから、ケンタがデッキの上のエリカを一瞬見下ろす。

ラピッド・スターが巻き起こす風の中、乱れる髪を手で押さえながら、発進して行くラピッド・スターを見つめるエリカ…


〜 つづく 〜

~ 初出:1994.06.18 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018