SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(167L)
RE:729
なぎさシティ上空。

雲一つない快晴の青空の中を、ジェットの白雲を引きながら、プテラノドンが高速で駆け登って行く。

そして、その後ろ、プテラノドンにぴったりと付いて、ラピッド・スターがプテラノドンを追撃している!

ラピッド・スターコクピット。
真っ青な青空がケンタとリエの頭上に広がる。

その真中に、プテラノドンが引くジェット雲が、真っ白な筋となって続いている。
キャノピーガラスに快晴の太陽が、ギラギラとハレーションを起こす…

しかし、幻想的なその風景とは裏腹に、高速飛行の重圧が、コクピットのリエとケンタを苦しめていた…

ケンタ
「…く、くそぉ、か、体が…つぶれそうだ…」

リエ
「頑張るのよ、ケンタ!…(計器を見る)…マッハ7.2…(ケンタの方を見て)…マッハ8まで上げるわよ!!」

更にドライブ出力を上げるリエ!
ジェットの炎が勢いを増し、ラピッド・スターの速力が更に増し始める!

みるみるプテラノドンとの距離を縮めるラピッド・スター!
想像を絶する加速が、圧力となってコクピットの二人に襲いかかる!

その力に必死に耐える二人。

ケンタ
「…グッ!…ウウッ!!」

リエ
「…ケンタ…しっかり!…もう少しで有効射程に入るわ…」

プテラノドンのコクピット。
操縦席のジャンクとタバタ。

ジャンク、モニターで追跡してくるラピッド・スターの映像を見ている。
ジャンク達もまた、凄まじい加速度に苦しんでいる。

タバタ
「(苦痛に顔を歪めながら)…旦那様…これ以上は…いくらメタモールと言えど…」

ジャンク
「…(モニター、ぴったりと付いてくるラピッド・スターを見て)…さすがは…ゲンザブロウ…良い出来だ…」

ラピッド・スターコクピット。
必死に圧力に耐える二人。

しかし、どうやらケンタの体力は限界に近い様子…
苦しげなケンタを見て、決断するリエ。

リエ(心の声)
「(ケンタを見て)…このままじゃ…ケンタがもたない…こうなれば…一気に勝負を賭けるしか…」

リエ
「ケンタ、瞬間的にフルパワーを出すわ!有効射程に入ったら熱源探知ミサイルを!」

ケンタ
「(苦しげに)…分かった…」

苦痛に顔を歪めながら、ターゲットスコープの照準を合わせるケンタ。

リエ
「行くわよっつ!!」

スロットル・レバーのリミッター・ロックを外し、一瞬、レバーを一杯まで引く
リエ!プテラノドンの姿が一気に接近してくる!

リエ
「今よ、撃って!!」

ケンタ
「このぉーっ!!」

ミサイル発射ボタンを思いきり叩き込むケンタ!
ラピッド・スターの両翼に取り付けられた熱源探知ミサイルが、一直線にプテラノドン目がけて飛んで行く!

次の瞬間、プテラノドンの片側の飛行用エンジンを直撃するミサイル!
爆発するエンジン!

リエは一気にスロットル・レバーを戻す。

速度を落すラピッド・スター。

ケンタ
「…やったぜ、姉ちゃん…」

リエ
「うん!偉いぞケンタ!!」

やっと高速飛行の重圧から開放されたケンタ、苦しそうに肩で息をしながらも、嬉し気に後部操縦席のリエを振り返る。

プテラノドンのコクピット。
エンジンに直撃を受け、機内にはアラームが鳴り響いている。

急激に速度が落ちるプテラノドン。

タバタ
「旦那様、左エンジンに被弾、エンジンが大破した様でございます!」

ジャンク
「(モニターを見つめながら)…よくもこの私に屈辱を!…機体反転、一気にB.O.C.目がけて急降下しろっ!!」

タバタ
「かしこまりました!」

急旋回し、一気に高度を下げて行くプテラノドン…

B.O.C.発着ポート。
乗務員用の搭乗ゲート。
制服のネクタイの乱れを気にしながら、B.O.C.のキャプテンと副操縦士が足早にゲートに向う。

どうやら急に呼び戻されたらしく、不満気な表情。

キャプテン
「全く、この国の治安はどうなってるんだ!ロボットの次は恐竜だと?冗談じゃない!」

副操縦士
「全くですよ。久しぶりの休日だって言うのに…」

キャプテン
「ところで乗客の方は全員、機に戻っているのか?とりあえず安全が確認されるまでは、付近へ退避しなければならんだろうからな。」

副操縦士、ブリーフィング・ケースの中から手帳程のターミナルを取り出す。
大型の液晶画面にタッチして情報を呼び出す。

副操縦士
「…どうやら大丈夫です。全員機内にいる様ですから。」

キャプテン
「(うなずく)…よし、急ぐぞ。」

副操縦士
「ハイ!」

B.O.C.ロビー。
恐竜出現のニュースに、ロビーには不安気な表情の乗客達が集まり、あちこちで情報交換をしている。と、ロビーにアナウンスが流れる。

アナウンス
「乗客の皆様にお知らせ致します。現在恐竜は防衛隊と交戦中の模様です。当機は乗客の皆様の安全を確保するため、一時、安全と思われる区域まで退避致します。皆様には折角の御旅行にご迷惑をおかけ致し、誠に申し訳ございませんが、ご協力をお願い致します。」

アナウンスに耳を傾けていた乗客達、アナウンスが終ると、再び一斉に話を始める。

ロビーの片隅、ソファーに座り込んだエリカとビトー。
エリカをなぐさめているビトー。

ビトー
「…(いたわる様に)…大丈夫、キミのボーイフレンドだってきっと無事だよ。なぁに、あんなに凄い飛行機だ、きっと恐竜にだって負けやしないさ。」

ビトーに励まされながらも、エリカはうつむいたまま、つぶやく。

エリカ
「ケンタ君…」

B.O.C.操縦席。
入ってくるキャプテンと副操縦士。シートに付き、シートベルトをかける。

計器のチェックをする二人。

キャプテン
「…よし、コースを房総半島上空にセット。設定完了後、直ちに発進だ!」

副操縦士
「了解!!」

キーボードから航路データを入力する副操縦士。
入力が完了すると、正面の窓ガラス上に設定航路情報が表示される。

スロットル・レバーを引き、徐々にエンジン出力を上げるキャプテン。

発着タワー。
B.O.C.とタワーを結んでいたコネクターが次々に外れて行く。
続いてドッキングロックがゆっくりと外れる。

B.O.C.の姿勢制御用のジェットノズルが一斉に噴射を開始し、B.O.C.はゆっくり
とタワーを離れて行く。

ロッキング・システムを機首に格納し、ゆっくりと機首を反転させつつ上昇するB.O.C.。

B.O.C.操縦席。
慎重にスロットル・レバーを調節しながら機体を操るキャプテン。

B.O.C.の巨大な機体がゆっくりと房総半島上空を目指し、空を進む…

B.O.C.操縦席。
突然レーダー・システムが警告音を発する!

副操縦士
「前方に、何か巨大なものが降下して来ます!」

キャプテン
「何ッ!?」

前方を注視する二人。
そこには片方の脇腹から黒煙を噴き上げながら、降下してくるプテラノドンの姿が!


〜 つづく 〜

~ 初出:1994.06.26 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018