SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(178L)
RE:673
撮影現場。
トゥースがキャムロン監督に映画出演を説得されている。

困った様子のトゥースだが、憧れのSF映画出演に、まんざらでもない様子。

トゥース
「(務めて真面目な口調で)…お話は分かりました。しかし、この件については私の一存でお答えする事ができません。…いま、上司に連絡をとりますので暫くお待ちください。」

アンテナを伸ばし、コミュニケーション・システムでオオツカを呼び出す。

道路の端に停車中のパトカー。
その車内では、オオツカ警部がワンディムから警備の状況報告を受けている。

オオツカの隣りには、今回の警備の応援として捜査一課から派遣されたイマイズミ刑事の姿。

ワンディム(声)
「…ええ、そうです。現在までの処、特に不審な兆候は確認されていません。…(考える)…警部、撮影が開始されて既に15日が経過しています。本当にドクター・ジャンクはダロスを狙って来るのでしょうか?」

オオツカ
「そうだな、此処まで目立った動きがないというのは…だが、油断をするな、奴にとって今回の撮影は格好の標的だろうからな。」

ワンディム(声)
「分かりました。」

回線を切るオオツカ。

イマイズミ
「彼の言うのももっともでスね。餌に食い付くにしては時間がかかってまスよね?」

オオツカ
「(うなずく)…ああ。だが、何か気になるんだ…何かある…きっと何か…」

と、コミュニケーション・システムの呼び出し音が鳴る。
回線を切り替えるオオツカ。

オオツカ
「私だ。」

トゥース(声)
「トゥースです。あの、実は警部…」

オオツカ
「ん?」

東京港。
晴海埠頭付近。小さな貨物船や水上バスが行き交っている。

水上バス船上。
乗客を満載した水上バス。
デッキから外を眺めていた乗客の一人、大声で海上の一点を指さす。

乗客
「オイ、あれは何だ!?」

周囲の人々も一斉にその指さす方向を見る。
と、海上の一点が波立ち、大きな水柱を吹き上げ始める。

緑色に濁った海面に、白い水柱が立つ。
その水柱の中から、金属製の巨大な物体が姿を現わす。
ドクター・ジャンクの大型潜水母艦、ブラウザスの艦首部分が、海上に突き出す!

騒然となる水上バス船上。
水上バスは汽笛を鳴らしながら左に思いきり舵を切り、ブラウザスから離れようとする。

突然、大きな音を立て、海上に突き出したブラウザスの艦首下面が開く。
ゆっくりと、大型のカタパルトシステムが姿を現わす。

そのカタパルトにはドクター・ジャンクのロボット、あのシュトゥルムが、陽の光にその機体を鈍くきらめかせながら、セットされている…

水上バス船上。

乗客
「アレを見ろ!ロボットだ!!」

海上。
その瞬間、轟音が轟き、カタパルトから白煙を噴き上げながら、シュトゥルムが打ち出される!周囲の海水が猛烈なジェット噴射に噴き上げられ、辺り一面に雨の様に降り注ぐ。

水上バスの乗客達から悲鳴が上がり、この凄まじい轟音に、皆耳を押さえてその場にうずくまる。

ブラウザスは発射の反動でザブリと海中に沈み込む!
その反動が、周囲に大波となって伝わって行く…

大波に翻弄される水上バス。

乗客達
「ウワーッ!!」
「キャーッ!!」

上空。
青空の中、機体に秋の日差しを受けながら、悠々と飛行するシュトゥルム。
頭部に巨大な2本角を持つ、堂々たる風格のある巨体である。

操縦席。
操縦席のドクター・ジャンク。モニターのタバタと交信している。

タバタ
「…しかし旦那様、本当にお一人でよろしいのでございますか?」

そのタバタの言葉に、ふっとモニターから目を離すジャンク。

ジャンク
「…タバタ、これは私の問題だ。20年の歳月に決着をつけるのは、誰でもない、この私だ…」

タバタ
「かしこまりました…」

スイッチを切る。前方の空を眺めるジャンク。

ジャンク
「今こそ、お前が世界一優れたロボットだと言う事を、証明してやるぞ、シュトゥルム…」

徐々に高度を下げ、下降を開始するシュトゥルム。

パトカー。
運転席のオオツカ警部、トゥースからの報告を受けている。
腕組みをして考え込んでいるオオツカ。しばらく黙っている。

トゥース(声)
「…(様子をうかがう様に)…警部?」

オオツカ
「…キャムロン監督は側にいるのか?」

トゥース(声)
「はい、いらっしゃいますが?」

オオツカ
「ちょっと話しがしたいんだが?」

トゥース(声)
「分かりました。…ん?」

オオツカ
「どうした、トゥース?」

撮影現場。
トゥース、何か反応をキャッチした様子。
センサー・システムを一斉に作動させ始める。

トゥース
「警部、アクティブ・スキャナに反応!上空に巨大な飛行物体をキャッチ、こちらに向って急速に接近して来ます!」

パトカー。

オオツカ
「何ッ!?」

モニターを切り替えるオオツカ。
トゥースのセンサーが捉えた情報がディスプレイされる。

一つの反応が、撮影現場目指し、一直線に進行している。

オオツカ
「これは…」

イマイズミ
「こっちに向ってきまスよ、警部!」

オオツカ
「(うなずく)…(コミュニケーション・システムのスイッチを入れ)…各員に告ぐ、所属不明の大型飛行物体が急速接近中。各員は応戦体勢、セーフティ・ロックを解除し、待機!」

ロボット達(声)
「了解!!」

イマイズミ
「(オオツカを見て)…警部…」

オオツカ
「ああ。遂に来たな…(イマイズミを見て)我々も行くぞッ!」

イマイズミ
「ハイッ!!」

急発進するパトカー。

撮影現場。
ワンディムとサーディーも合流し、アームバルカンを上空に向けて構えながら待機している。

トゥース
「皆さん、上空から所属不明の大型飛行物体がこちらに向って接近中です。皆さんは安全の為、一旦避難をお願いします!」

避難を開始する撮影スタッフ達。
トゥースの側にいたキャムロン監督、トゥースを見上げる。

キャムロン
「とんだ事になったが…ぜひ考えておいてくれ給え。」

トゥース
「え?…はぁ…」

と、上空を凝視していたワンディムが叫ぶ。

ワンディム
「皆んな、来たぞ!!」

一斉に空を見上げるロボット達。空の一点に何か黒い物体が浮び上がる。
見る見る接近してくる物体。シュトゥルムの巨体である。

ワンディム
「…やはりドクター・ジャンクのロボットなのか?」

撮影現場の上空に静止するシュトゥルム。
その姿を見たキャムロン監督の表情が変わる。

キャムロン
「(驚愕して)…あのロボットは…」


〜 つづく 〜

~ 初出:1994.11.06 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018