SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(144L)
RE:NON
撮影現場。
撮影現場上空に、シュトゥルムの堂々たる巨体が、微かにジェットの噴射音を立てながら、静かに静止している…

驚きと恐怖の入りまじった表情で、シュトゥルムを見つめるキャムロン監督。

キャムロン
「(シュトゥルムを見つめたまま)…あれは…あれはやはりシュトゥルム!……(目をそらし、うつむく)…ドクター…エリオット…ウォルフシュタイン…」

トゥース
「(驚いて)…キャムロン監督、あのロボットをご存じなのですか!?」

キャムロン
「……」

キャムロンの返答を待つトゥース。沈黙が流れる…

ワンディム
「(トゥースを見て)…何してる!?早く監督を安全な場所へ!!」

トゥース
「(ハッとしてワンディムを見る)…ハ、ハイ分かりました!(キャムロンを見下ろして)…キャムロン監督、私と一緒においで下さい。安全な場所にお連れします。」

キャムロンを庇う様にシュトゥルムとキャムロンの間に割って入るトゥース。

オオツカ警部とイマイズミ刑事を乗せたパトカーが、土煙を巻き上げながら現場に到着する。
パトカーから降り、上空に静止するシュトゥルムを見上げる二人。

と、上空に静止しているシュトゥルムからドクター・ジャンクの声が響く。
シュトゥルムの口に当る部分がジャンクの声に合わせ、強弱をつけて発光する…

ジャンク
「…待ち給え、警視庁のロボット諸君!私はそこにいる彼、スティーブン・キャムロン君と話しがしたい。邪魔立ては御無用に願いたい!」

トゥース
「(シュトゥルムを見上げ)何ッ!!」

ジャンク
「これは私と彼の問題だ、諸君はしばらく黙っていてくれ給え。」

シュトゥルムを見つめるロボット・チーム、そしてキャムロン。

シュトゥルム操縦席。
ジャンクが正面のモニターを見つめている。

モニターにキャムロン監督の姿。
大きくため息をつくジャンク。

ジャンク
「…何故だキャムロン君…何故再びあの作品の再現など考える?」

撮影現場。

キャムロン
「違う!!これは20年前のあの作品とは何の関係もない!!」

ジャンク
「確かに。…(思い出す)…あの時はもう少しオリジナルに近かったからな…だが、キャムロン君、君の目指していたものはあの時も、そして今回も同じはずだ!!」

キャムロン
「(気色ばんで)何を言う!!」

ジャンク
「…『青銅の巨人』!!そうではないのか!?」

キャムロン
「(ハッとして)…それは…」

ジャンク
「(悲し気に)…何故だキャムロン君…何故そっとしておいてくれなかったのだ…」

無言で見つめるキャムロン。

シュトゥルム操縦席。
操縦席のジャンク。

正面のモニターには、トゥースと、その脇に立つキャムロンが映し出されている。
モニターのキャムロンに向って語りかけるジャンク。

ジャンク
「『青銅の巨人』は私も大好きだよ…(目をふせる)…私はね、キャムロン君。あの作品を観てロボットを創ろうと決めたんだ…素晴らしいロボットをね。」

撮影現場。
上空に静止しているシュトゥルム。
それを見つめる一同。

ジャンク
「…だからこそ20年前、君が開発中だった私のロボットを、あの作品に使いたいと頼んできた時、私は君の熱意に負けて、未完成だったロボットを、無理を聞いて君に貸し出した…あの時、君は約束したはずだ、私の注意を守り、決して無理をさせないと……だが君は私の注意を無視したのだ!」

キャムロン
「違う!あれは事故だ!不幸な事故なんだ!!」

ジャンク
「(嘲笑う様に)…事故だと?冗談ではない…(怒りを込めて)…君の愚行の結果だ!!」

キャムロン
「違う!!」

上空のシュトゥルム、ゆっくりと撮影現場の隅に佇むダロスを指さす。

ジャンク
「本来ならば…」

その指さす方向を見る一同。

ジャンク
「…今、あそこにいるべきロボットは、あの様なガラクタではない。このシュトゥルムこそ、あの場所にいるべき唯一のロボットなのだ!!…あの事故…あの事故さえなければ、あの様な稚拙なロボットに頼らずとも、この優秀なシュトゥルムの後継者達が、世界各国に配備されていた筈だ!」

ダロス・ワンコクピット。
操縦席でジャンクの言葉を聞いているスパットマイヤー少尉。
ジャンクの言葉に怒りを募らせる。

スパットマイヤー
「…野郎、なめやがって…(ニヤリとして)…見てろ!」

操縦捍の発射ボタンを押す。
撮影用の曳航弾が、白煙の航跡を引きながら、シュトゥルム目がけて発射される!
不意に曳航弾を受けたシュトゥルム、その頭がダロスの方向をゆっくりと向く。

キャムロン
「(驚いてダロスを振り返り)やめろヘンリー!彼奴は唯のロボットじゃない!!」

スパットマイヤー
「うるせぇ!!…(シュトゥルムを見上げ)…テメェみてェな旧式のロボットが、このダロスにかなうとでも思ってやがるのか!?」

オオツカ
「(ダロスを見て)…いかん!…(ワンディムを見上げ)…ダロスをとめろ!ジャンクを挑発させるな!!」

ワンディム
「了解!」

ダロスを押さえようとするワンディム。ダロスに取り付く!

ワンディム
「やめろッ!奴を挑発してはいけないッ!!」

しかし、ダロスは怪力でワンディムを圧倒、押えつけるワンディムを徐々に押し戻しながら前進する。

スパットマイヤー
「うるさい、邪魔するなッ!!」

遂にワンディムを怪力ではね飛ばすダロス!
上空のシュトゥルム、ゆっくりとダロスに向って正対する。

シュトルム操縦席。
操縦席のジャンク。

ジャンク
「(ニヤリとして)これは面白い。そんなに望みならば、今此処で最強のロボットとはどういうものか、たっぷり教えてやる!!」

睨み合うダロスとシュトゥルム…


〜 つづく 〜

~ 初出:1994.11.13 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018