SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(185L)
RE:445
撮影現場。

ナレーション
「突如出現したドクター・ジャンクのスーパーロボット、シュトゥルム。撮影現場には不気味な沈黙が流れていた…」

睨み合うシュトゥルムとダロス。

パトカー前。
シュトゥルムとダロスを見上げている、オオツカ警部とイマイズミ刑事。

オオツカ
「(イマイズミを見て)ダロスのパイロットは!?説得するんだ、対決を止めねば!」

イマイズミ
「は、ハイ!」

パトカーのターミナルを操作する。
ターミナルのディスプレイにパイロットの顔写真と所属コードが表示される。

イマイズミ
「(オオツカを振り返り)ヘンリー・スパットマイヤー少尉でス!」

オオツカ
「よし!…(パトカーに歩み寄り、コミュニケーションシステムのマイクを手にする)」

イマイズミ
「…アッ、ダロスの適合回線はタイプD2でス。」

オオツカ
「(うなずき、チャンネルをチューンする)…スパットマイヤー少尉、こちら警視庁科学捜査一課のオオツカだ!すぐに対決を止めるんだ!君が相手にしようとしているロボットは非常に危険だ!」

ダロスコクピット。
操縦席のスパットマイヤー少尉。
正面の270度スクリーンに、シュトゥルムがゆっくり降下して来る様子が映し出されている。

正面のシュトゥルムを凝視しているスパットマイヤー。
その脇でコミュニケーションシステムから誰かの声が聴こえて来る。
うるさそうにスイッチを入れるスパットマイヤー。しかし目は正面を向いたまま。

スパットマイヤー
「何だ、オレは忙しいんだぞ!!」

モニターにオオツカ警部が映る。

オオツカ
「少尉、すぐ対決を中止するんだ!あのロボットは我々に任せ給え!」

スパットマイヤー
「バカ言うなッ、こっちは軍用ロボットだぞ!あんた達こそおとなしく見物してなッ!!」

拳で思いきりコミュニケーションシステムのスイッチを叩き込み、回線を切断するスパットマイヤー。

正面のシュトゥルム、地上に降り立つ。
身体の各部で姿勢制御用のバーニアが、まるで生物を想わせる複雑な動きを見せながら、機体に格納されて行く。

と、突然シュトゥルムの両肩、両足の関節ジョイント部分がグッと外側に飛び出す!

球体関節があらわになり、機体の形が大きく変化するシュトルム!

スパットマイヤー
「何ッ!!」

タナカ鉄工所。
晩秋の午後の日差しは、夕方にはまだ間があるというのに、早くも地面に長い影を作っている…

鉄工所の古びたトタン板の外壁に、周囲の樹木の影が、チラチラと揺らめいている…

鉄工所の片隅。
カタパルトの上に固定されたラピッド・スター。そのドライブシステムのカバーが外されており、リエとケンタが整備をしている。

スパナを巧みに使い、エネルギーバルブを調整するケンタ。
リエはコクピットでドライブ出力を調整している。

ケンタ
「(コクピットのリエを見上げ)…これでどう?さっきよりは出力が上がると思うけど?」

ケンタの声にドライブ出力を上げるリエ。

ラピッド・スターのメインドライブが、リエのコントロールに合わせて徐々に出力を上げる。
快調な排気音が工場に響く。

リエ
「(うなずく)ウン、いい調子。…(ケンタを見て)…オッケー、これでいいわ!」

うなずき、ドライブシステムのカバーを手際良く取り付けるケンタ。リエを見る。

ケンタ
「…ねえ、姉ちゃん?」

リエ
「何?」

額をぬぐいながら、コクピットへのタラップを登って来るケンタ。
タラップに腰を降ろす。

ケンタ
「…爺ちゃん何だかこの頃元気ないゾ。いつものしょーもないダジャレもイマイチサエないし…どうしたのかナ?」

リエ
「そうねぇ…(考える)…(明るく)ま、お爺ちゃんだって、いっつもダジャレ言ってる訳に行かないじゃない。」

ケンタ
「(変に納得した様子で)…あ、そっか。…そうだよナ、あのダジャレ、オレ達が聞いてても疲れる位だからナ、自分で聞いてりゃスゲー疲れるゼ…(にっこりとうなずき)なんだそッかぁ。」

リエ
「(苦笑しながらうなずく)…そうそう。」

ケンタの妙な論理に苦笑するリエ。
しかし、フッと何処か心配そうな表情を見せる。
と、ショウイチの声。

ショウイチ
「おーい、お前達、お爺ちゃん見なかったか?」

声の方向を見るリエ。ショウイチが慌てた様子でやって来る。

リエ
「こっちには来てないわ。…何かあったの?」

ショウイチ
「いや、さっきレーダーに妙な反応が出たんだが、すぐ消えてしまって…気になったもんだからな、お爺ちゃんにレコーダーを見て貰おうと思ったんだが…こっちのレーダーには出なかったか?」

リエ
「ごめん、今まで整備中だったから、ワーニング止めちゃってたの。」

ショウイチ
「いや、いいんだ。(にっこりと)…大方、角の喫茶店だろう。」

ケンタ
「(嬉しそうに)爺ちゃんさぁ、自分のダジャレがヘタッピイだって事に、やっと気付いたんだゼ。」

ショウイチ
「(困惑して)なんなんダ、それは?」

喫茶店。
古びた喫茶店のカウンター。

ゲンザブロウが目の前に置かれたコップの中の水と氷を見つめ、考え事をしている。
奥の鴨居にかけられた小型テレビでは、時代劇が流れている…

コップの中の氷が小さな音を立てて動く…

ゲンザブロウの前にコーヒーカップが置かれる。
コーヒーが湯気を立てている。

フッと我に返るゲンザブロウ。

喫茶店の主人がにっこりと微笑んでいる。

主人
「ハイ、モカお待たせ。…どうしたんですか?珍しく考え込んで。ショウイチさんと喧嘩でもしたんですか?」

ゲンザブロウ
「(照れた様に)あ、イヤイヤそういう訳では…ついついボッとしてしまってな。」

主人
「(微笑み)…物思いの秋ってヤツですよ。」

と、テレビの時代劇が中断し、ニュース速報が入る。

映像が切り替わり、ダロスとシュトゥルムの戦闘が映し出される。
緊張した面持のアナウンサーが、モニターの映像を背景に映る。

アナウンサー
「ええ、番組の途中ですが予定を変更しまして、ニュース速報をお送りします。本日午後3時30分頃、中央行政区の都市再開発地区に突如巨大なロボットが出現、同地区で撮影中の映画『ロボット・ウォーズ』に出演中だったアメリカ陸軍の軍用ロボット、ダロスと戦闘状態に入った模様です…」

画面に映し出されるシュトゥルム。
その姿にゲンザブロウの視線が吸い寄せられる。

ゲンザブロウ
「あれはシュトゥルム……ウォルフシュタイン、君は…」

テレビを見ている主人。

主人
「こりゃ、エライ事になったぞ!ねぇ(振り返る)ゲンザブロウさん…」

しかし、そこにはゲンザブロウの姿はない。
湯気を立てているコーヒーカップの前に1000円硬貨が置かれている…

主人
「あれ?…一体どうしたって言うんだ…」

撮影現場。
シュトゥルムが、まるで人間の様になめらかな動きで、ダロスに回し蹴りを食らわす!

ふっ飛ぶダロス!スーパーマーケットの建物に倒れ込む!
入口のガラスの大屋根が、大音響と共に崩れ落ちる!

倒れ込んだダロスに向って、シュトゥルムがゆっくりと歩いて来る。
ダロスに近付くや、怪力でダロスを持ち上げる。

腕一本でダロスを持ち上げるシュトゥルム。

ダロスコクピット。
操縦システムがあちこちでショートし、モニターには各部の損傷状況がアラーム表示されている。

正面のモニターに、ノイズに混じってシュトゥルムの姿が映し出される。

スパットマイヤー
「(怯えて)く、くそぉ、なんて奴だ…」

撮影現場。

オオツカ
「いかん!(ロボット達を見て)各機、ヘイルストーム・ミサイルをセット、ダロスを援護しろッ!!」

ロボット達
「了解!!」


〜 つづく 〜

~ 初出:1994.11.19 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018