SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(206L)
RE:130
空。
青空を猛スピードで飛行するラピッド・スター。
大きく空中に弧を描く様な飛行コースを取りながら、颯爽と機体を翻し、一気に急降下する。
その機体が陽の光を受け、キラキラと眩しく輝いている!

急降下しながら、機体下部から大型ビーム砲を出すラピッド・スター。

その前方、大空の中をゆっくりと下降しているドクター・ジャンクの大型ロボット!!
その機体のあちこちから、無数のミサイル・ランチャーが姿を現わす。

一斉に発射されるミサイル!
ロボットから一斉に幾筋もの白煙の尾が、ラピッド・スター目がけて一斉に走る!
凄まじい数のミサイル!

突如、その白煙の航跡の先端で、幾つもの目映い輝きが起こる!
ラピッド・スターがパルスビームで応戦している!
次々に破壊されるミサイル!

素晴らしい操縦で、まるで空中を舞う様に飛行するラピッド・スター!
機体をロールさせながら、断続的にパルスビームを発射する!

一瞬、ラピッド・スターの機体が輝く。
その周囲で起こる無数の爆発…

そのきらめきの中を、小さな飛行物体が猛スピードで飛び出して来る!
グラン・マキシマイザー発射態勢に入ったラピッド・スターだ!!

メイン・ブースターに点火し、上昇を開始するロボット。
それを追撃するラピッド・スター。

次の瞬間、ラピッド・スターから強烈なビームの輝きが、ロボット目がけて発射される!
一瞬、ロボットの周囲の大気が大きく湾曲する!

爆発するロボット!!
大きく破片を飛び散らせ、海上に落下する!
巨大な水柱が上がる!!

空中に静止しているラピッド・スター。
大型ビーム砲がゆっくりと機体に格納されて行く…

その様子が、徐々に走査線の入ったビデオ映像に変わって行く。

ゆっくりとズームアウトしてゆくと、その周囲にスクリーンのフレームが現われる。
何やらスクリーンに映し出された映像の様である…

その映像を見つめている2つの人影。
ギャリソン・タバタと、ドクター・ジャンクである…

悔しげな表情でスクリーンを見つめているタバタ。

タバタ
「(悔しげに)クーッ!!またまたやられてしまったでございますですッ!(大げさに拳を握り締め)おのれ飛行機ッ!! …(勢い良くジャンクを振り返り)…旦那様、かくなる上はこのプログレスで、小生意気なあの飛行機をやっつけましょうでございますッ!!」

しかし、当のドクター・ジャンクは至って冷静な様子。
銀のカップに注いだワインをゆったりと飲み干す。

ジャンク
「タバタ…」

タバタ
「は?」

ジャンク
「お前には今回の作戦の主旨が、全然分かっておらん様だな?…」

タバタ
「(ムッとして)お言葉でございますが旦那様、アレは私めが夜もろくろく眠らずにでございますねぇ…やっとこのぉ、完成させた…」

ジャンク
「(遮る様に)タバタ…」

タバタ
「何でございます?」

ジャンク
「…お前の努力は認める。そして、苦労して完成させたロボットを壊された怒りもまた、もっともな事だ。」

タバタ
「もっともでございましょう!?」

ジャンク
「しかしだ、今回の作戦にはだな、その様な些細な問題の前に、遠大なる目的がある事を忘れてはならんぞ。」

タバタ
「はぁ…遠大なる目的でございますね…(納得した様にうなづく)そうでございました!我々には遠大な目的がございました!!……」

タバタ
「………って、何でございまいしたっけ?」

その言葉に、いきなり手にしていた銀のカップをタバタに投げつけるジャンク。
カップは甲高い音を立ててタバタの頭に炸裂する!

タバタ
「(頭を押さえ)あたッ!!ひどうございますッ!!」

ジャンク
「(怒って)お前という奴はッ!私が何の考えもなく、ゲンザブロウのメカに良い格好させておると思っておるのか!?」

タバタ
「(おずおずと)…でも、いつも結局はそうでございますけど?…」

ジャンク
「何ッ!!」

凄い形相でタバタを睨みつけるジャンク!慌てて思いきり首を横に振るタバタ!

ジャンク
「(気を取り直し)…確かに、これまではことごとく失敗の連続であった。数限りない苦渋を、我々は嘗めさせられて来た。 …しかしだ!今度は違うぞ!」

タバタ
「(感嘆して)おおっ!」

ジャンク
「あれを見るが良いッ!!」

自信に満ち溢れた様子で操縦席の片隅を指さす。

片隅に小型モニターや、センサー、怪しげな電飾の施された計器が設置されている。
計器に付けられた格子状のパネルがランダムに発光し、まるで昔の特撮番組に登場するコンピュータの様相を呈している…

ジャンク
「…フッフッフ…ハッハッハ…ハーッハッハ!!見よ!私が総力を結集して完成させたインテリジェント・マルチアナライザーだ!!」

タバタ
「………はい?」

ジャンク
「(ヤケ気味に)インテリジェント・マルチアナライザーッ!!……(再び気を取り直し)…今回はあの 飛行メカニックを狙うのだ。…過去の作戦を振り返ると、我々の計画は必ずあの飛行メカニックに邪魔されておる。…(ニヤリとして)…と、いう事はだな、 言い換えれば、最も機動性の高いあの飛行メカニックさえ封じれば、奴らの戦力は大幅にダウンするという事だ。」

タバタ
「(尊敬の眼差しで)さすがは旦那様、やはりお考えになる事が違いますでございます。」

ジャンク
「フッフッフ、今回の収集で彼奴の最大の武器、あの強力なビームの情報も揃った…(不敵な笑みを浮かべ、スクリーンに映し出されるラピッド・スターの静止画像を見つめる)…見ておれ、ゲンザブロウの飛行メカニックめ。」

スクリーンに映し出されるラピッド・スターの静止画像…

運河。
夕暮れの運河。
サイレンス・モードに切り替えたラピッド・スターが、ゆっくりと垂直降下する。

ヴァーティカル・ジェットが運河の水を巻き上げ、夕方の太陽に照らされて、周囲に七色の虹が立っている…

ゆっくりと着水するラピッド・スター。

コクピット。
メインドライブを停止させるリエ。
と、前部操縦席のケンタが振り返る。

ケンタ
「ねえ、姉ちゃん?」

コンソールパネルを見ていたリエ、その声に顔を上げる。

リエ
「何?」

シートから身を乗り出し、リエの方を向くケンタ。

ケンタ
「…ナンかヘンだゾ。絶対おかしいよ!」

と、鈍い作動音と共に、機体に軽いショックを感じる。
一瞬そのショックに気を取られる二人。キャノピーガラスの外を見る。

機体外部。
水中のカタパルトがゆっくりとラピッド・スターの機体を固定する。

コクピット。

リエ
「(再び計器を調整しながら)何よ、いきなり。」

ケンタ
「あのロボットの事さ。…さっきっからずっと考えてたんだけどさ、簡単過ぎるよ!」

リエ
「(考え)…確かに、ここんトコ手ごたえのないロボットばっかりだったケド…(微笑み)…考え過ぎじゃないの?」

ケンタ
「(真剣に)ヤ。ナンかあるって、絶対!オレのチョーリョクがピピッと感じるゼ!」

リエ
「え?何よ、そのチョーリョクって?…超能力の間違いじゃないの?」

ケンタ
「姉ちゃん知らないのカ!?(ポーズを取り)『チョーリョク戦隊チョーレンジャー』!」

リエ
「(笑いながら)知らないわヨ、ソンなの!」

ケンタ
「なにッ!?…チョーレンジャーを知らないとは…さてはリエ、お前ジャマノイアだな!…食らえ!(大げさにポーズを作り) チョーリョク・ハンマーッ!!」

リエの頭を叩くケンタ。

リエ
「(ムッとして)痛ッ!何すんのよぉ!!(悪戯っぽく)よぉし…チョーリョク・ハンマー返しッ!!」

負けじとケンタの頭を叩くリエ。

ケンタ
「痛ってーッ!(笑いながら)チョーリョク・ハンマー返し返しッ!!」

リエ
「やったな!チョーリョク・ハンマー返し返し返しッ!!このコノッ!!…」

調子に乗り、ケンタをボコボコにしてしまうリエ!

ケンタ
「チッキショー!痛てー!痛てーよ、姉ちゃん!」

リエ
「(得意気に笑いながら)どうだ、参ったか!」

と、コミュニケーション・システムにショウイチが映る。
修羅場と化したコクピットの様子に呆れるショウイチ。

ショウイチ
「(呆れて)お前達…一体何やってるんだ?…」

運河に降ろされたレールに乗り、ゆっくりと鉄工所に回収されて行くラピッド・スター…


〜 つづく 〜

~ 初出:1995.07.02 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1995, 2018