SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(161L)
RE:480
朝。
爽やかな初夏の日差しが、辺り一面に満ちている。
青空には綿雲が点々と浮かび、ゆっくりと空を流れて行く…

高校正門。
近未来的な外観を持つ真新しい校舎が、朝の日差しの中に建っている。
正門の銘板には『東京都立 隅田川高等学校』の文字が見える…

校舎内。
『2年A組』の札が廊下に掛かっている。

教室。
授業中の教室。
教室正面の黒板に当る部分、高輝度の液晶ディスプレイには、英作文の課題が映し出されている…

生徒達は皆真剣な表情で、自分の席に設けられた小型のコンソールに向い、キーボードから文章を入力している。一部には既に出来上がって退屈そうな表情の生徒もいる。

生徒達の中にリエの姿もある…
しばらく自分の席の小型液晶ディスプレイを眺めては、気に入らないのかチョコチョコとキーボードを打ち、何やら修正しているリエ…

先生は生徒達の打ち込んだ内容をコンソールで眺めている…

教師用コンソール画面。
画面には生徒達の打った文章が、次々に分割表示されて行く。

その様子を眼で追って行く先生…
と、一つ全く白紙の画面が現われる。画面の右端に『ヤマグチ・トシヒコ』の名。
コンソールから顔を上げ、苦笑しながら一人の生徒の方を見る。

先生
「(コンソールを見ながら)…さぁて、どうやら一人を除いてみんな出来たみたいだな?…(顔を上げ、教室の後ろの方を見る)オイ、ヤマグチはまたお昼寝中か?」

教室にドッと起こる笑い声。生徒達の視線が一斉に、一人の生徒に集まる。
教室の後ろの席。立てかけた教科書の陰から、微かに寝息が聞こえて来る…

教科書の陰で、いい気持ちで眠り込んでいる一人の少年。
先日ラピッド・スターの映像に見入っていたあの少年である…

少年の側に来る先生。

先生
「(少年の顔を覗き込み、呆れた様に)…全く気持ち良さそうに眠ってるなぁ、コイツ。…おい、ヤマグチ!」

その声に眼を覚ます少年。寝ぼけた様な表情でゆっくりと顔を上げる。
顔に大きな寝痕が付いている。眠そうに眼をこする。

先生
「どうせまた、徹夜で推理小説でも読んでたんだろう?え、探偵先生?」

教室のあちこちで起こる笑い声。

先生
「(呆れて)おまえなぁ、授業の時くらい少しは遠慮しろヨ。…まったく、弁当のパンを食っちまった犯人だとかだなぁ…そういうショーもない問題ばっかりじゃなくてだ。たまには本業の課題の方も解決してもらいたいモンだな。」

ドッと笑う生徒達。
全然状況が把握できず、眠そうな顔で周囲を見回す少年。

と、授業の終了を知らせるチャイムが鳴る。

先生
「(チャイムを聞き)お、もう終りか?…(周囲を見回し)…よおし、じゃぁ今日はここまで。…今の課題はこっちでセーブしとく。次回みんなに発表してもらうから、そのつもりでな。」

生徒達
「(不満気に)エーッ!!」

一瞬苦笑する先生。しかし、先生は生徒達のブーイングを無視して続ける。

先生
「(トシヒコを見て)…それから、ヤマグチには後で今の課題を提出してもらうからな。(念を押す様にトシヒコの顔を覗き込み)分かったな!」

トシヒコ
「…(不満気に)は〜い。」

先生
「じゃ、これで終わる。」

教壇に戻る先生。

クラス委員
「起立!」

一斉に立ち上がる生徒達。

クラス委員
「礼!」

お辞儀をする先生と生徒達。
先生はデータをセーブしたメモリー・クリスタルをコンソールから抜き取ると、
教室を出て行く。

トシヒコ
「…アーついてねェ。(欠伸をして)ファ〜ァ!」

廊下。
休み時間になり、生徒達が出てくる。
リエと友人のヨシヤマ・カズコが話しながら歩いている…

カズコ
「ねぇねぇリエ、出来た、今の?」

リエ
「エ?…もうゼーンゼン!(不満気に)だってイキナリなんだもん!ズルイわよミカミ先生!」

カズコ
「(思いきりうなずき)そうよねぇ!いっつも抜打ちだもんね。(おどけて)いつかフクシューしてやるッ!!」

リエ
「(吹きだしながらうなずき)そうそう!!ロクな人生送れないわよ、きっと!」

職員室。
先程の英語の先生、突然大きなクシャミをする。

ミカミ先生
「ヘーックショイ!!」

周囲を見回すミカミ先生。

廊下。

カズコ
「…それにしてもさァ、おっかしいネ、ヤマグチ君って?」

リエ
「ウン。変わってるよネ。ねぇ、ヤマグチ君ってホントに私立探偵目指してるの?」

カズコ
「なんかそうみたい。家とかさ、探偵小説とか一杯でスゴいんだって。研究してんだって。」

リエ
「(呆れて)へ〜」

カズコ
「こないだ聞いたらさ、本人も私立探偵になるんだって言ってんの。なんか結構本気みたいよ。…でさ、そんときなんだけどさ、ヤマグチ君と話してたら、こないだテレビでやってた謎の防衛隊あるじゃない?」

リエ
「うん、ショージさんが出てたヤツ?」

カズコ
「そうそう!ヤマグチ君ったらそのさ、防衛隊のパイロットがさ、この学校にいるって言ってんのよ。」

リエ
「(ドキッとして)エッ!?…何よ、ソレ?」

カズコ
「(おかしそうに)…でしょ?あたしもさ、何バカなコト言ってんのって言ったんだけどさ、本人結構自信タップリでさ、(声色をまね)『オレにはカクショーがある』とか言ってんの。キャハハハ!!」

大笑いするカズコ。
しかしリエは内容が内容だけに、顔は笑いながらも内心穏やかではない様子。
あれこれ想像が頭を駆け巡っている様…

リエ
「(おずおずと)…でもさ、なんでそんなコト言ってんのかなぁ?」

カズコ
「え?リエもそんなコト考えてるワケ?」

リエ
「(慌てて)や!そうじゃないんだケドさ、(妙に明るく)ホラぁ、やっぱりさ、ナンカ気になるじゃない…ね?」

カズコ
「…まぁ、そうかも知んないケド…あたしも聞いたんだけどさ、秘密だって教えてくんないの。」

リエ
「秘密?」

カズコ
「(呆れた様に)『捜査上のヒミツ』なんだって。」

リエ
「ふ〜ん。」

素っ気なく返事をするリエ。
しかし、色々な想像が頭の中に渦を巻いている様子…
すっかり上の空になっている。

リエ(心の声)
「…なんか困ったコトになっちゃったなぁ…」


〜 つづく 〜

~ 初出:1995.07.22 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1995, 2018